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いつでもどこでも映画と読書、あとなんだろう
by ののちゃん
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 いままででの人生で、一番通った店は居酒屋だと思う。たぶん、これは間違えないと思う。それが今や、1ヶ月に10日の飲酒。辛いよ~。休肝日の過ごし方ってむつかしい。 それで学生時分に戻って、いつでもどこでも映画と読書に明け暮れようと思う。大好きな川上弘美さんは、読書三昧の毎日を、なんだか彩りに欠ける人生ではありますと謙遜して書いていた。 う~む、ボクの方は、こりゃ実感だなぁ。
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双葉十三郎先生を偲ぶ

 初めて双葉十三郎先生の文章を読んだのはのは、1960年の秋だった。
場所は荻窪二丁目の角の床屋さんで散髪して、その隣の本屋で『スクリーン』誌連載の『ぼくの採点表』を立ち読みした。
前髪パッツンの坊ちゃん刈りから、生まれて初めて横分けに変えた日だ。
すこし大人になれた様な気がして、なんか得意で、うれしくてうつむいて笑った。
照れくさくもあった。にわかに色気づいた頃だった。
でもその時は、まだ『ぼくの採点表』の書き手が双葉先生(以下、先生と略)だとは記憶しなかった。

 そして数年が過ぎた。
中学生の休憩時間には、
『M.Mはマリリンモンロー、B.Bはブリジット・バルドーで、C.Cは誰だ?』
上のような、知ったかぶりの遊びをよくした。
C.Cこと、クラウディア・カルディナーレは、『ブーベの恋人』でよく知っていた。
映画のテーマ曲は『ザ・ヒットパレード』で、大好きだった、美しいお姉さんの園まりさんが歌っていた。
♪女の命は 
♪野原に人知れずに咲く花よ
だったと思う。
マイナーコードの曲だった。レコードも、下井草の頃に買った。
クラウディア・カルディナーレの『ブーベの恋人』の映画評は、『ぼくの採点表』で読んだ。
淀川長治さんが編集長の『映画の友』などの双葉先生の文章は、お洒落会話に溢れ、読んでいてウキウキした。
ルネ・クレマン監督の『危険がいっぱい』だと、“ドロン君がドロンする話”とかのサブタイトルがついていたっけ・・・。まじめくさった風で、実はとぼけたユーモア批評文に、ひたすら憧れた。
先生が書くと、雑誌のそこだけ、際立った都会的ユーモアの洗練があって、そこだけに陽が当たったようだった。
立ち読みだが、何度も何度も、噛みしめるように熟読した。

 大学に入った頃に、SRの会員だった友だちから先生の『“疑惑の影”を分析する』(アメリカ映画)を借りて読んだ。
これは瞠目すべき批評だった。
ヒッチコックのサスペンス醸成技法について、絵コンテを書かれ、構図のカットごとに具体的にサスペンス醸成方法の分析がなされていた。
ヒッチコックが『北北西に進路をとれ』の宣伝のために、来日した時の『ヒッチコック・マガジン』の座談会の記事も読んだ。
先生はヒッチコックに向かって、北北西に進路をとったら、三十九階段(『三十九夜』)が見えたのは錯覚でしょうか?と尋ねた。『北北西に進路をとれ』の原型は、同じヒッチコックの旧作『三十九夜』だと知ったのは、ずっと後のことだ。
先生の面目躍如である。軽妙洒脱、一言で的を射抜く。
頭が切れ、大胆な質問だった。
だって、トリュフォーのヒッチコック・インタビューなど、おっかなびっくりの迎合が見え隠れする。
これは、映画ファンなら当然である。

 また、B.ワイルダー監督の『情婦』の有名な光る片眼鏡のシークエンスを、殺人教唆だと喝破したのも、先生が最初だったと聞く。
 切れる批評は、日本映画月評でも明らかであった。
小津安二郎の『風の中の雌鶏』を床の間の置物みたいな作品と評した。
黒澤明の『静かなる決闘』は、静かすぎて、枝ひとつ動かない始末と書いた。
 
 先生は東大経済学部を卒業して、住友本社の調査課の課長まで勤められた。
映画批評は学生時代からずっと続行していたが、親孝行のための就職だったという。
自宅の庭に焼夷弾がいくつも林立して、消火しているときに、これで死んだと思えば映画批評一本に絞ってもよいな。。。と考えたそうだ。

 先生が本当に素晴らしいのは、差別なく、というよりむしろ嬉々として、埋もれたB級・C級のプログラム・ピクチャーを紹介してくれたことだ。
たとえば、学生時代ならSFファンならドーゾの『地球爆破作戦』やミステリの『ポーラの涙』など、楽しい小佳作だった。
『殺しの接吻』など今でも、飯田橋の小汚い時代のギンレイホールで観たときの興奮が忘れられない。
先生のオススメ作品をみるために、今日は千葉方面へ、明日は横浜の映画館など、あちこちで映画を観て歩いた。
上のような作品評は『キネマ旬報』などでは、ゼッタイ採り上げられることはない。

 さらに歳月は流れ、バリー・レビンソンやウォルター・ヒルは言うに及ばず、たとえばC級作家だが、結構いけるハワード・ドゥイッチやドナルド・ペトリーなどを知る。
実は、双葉評を読むコツがある。
同じ☆☆☆の評価でも、先生の好みが隠し仕事のように潜んでいる。
二十年、三十年と長く愛読していると、褒めていなくても、ああ、この映画はお好きなのだな。。。とわかる。
まさしくアウンの呼吸である。
愛読しているうちに、先生が犬好きであること、ゴルフ好き、アメリカン・フットボール愛好家、シェークスピアに造詣が深いこと、格闘技がお好き、なども仄見えてくる。
今では、好みの犬の種類までもわかる。
かつては、シャーリーマクレーンがゴヒイキ女優だったけれど、スーザン・サランドン、比較的最近ではメグ・ライアン、ジャクリーヌ・ビセット、ミシェル・ファイファーやメラニー・グリフィスも御贔屓だった。
双葉ファンならではの読み方だと、クリスティ・マクニコル、ダイアン・レイン、そしてユマ・サーマンがタイプであったのが解る。一番お好きだったのは、近いところでは、ドミニック・サンダにトドメを刺すでしょう。
 そのうちに、武蔵小山の先生のご自宅から試写室までの通勤ルートや朝のたまごかけご飯が好物なのも知る。
こうなると面識こそないが、まさにストーカーである。
けれど、ボク自身は、「趣味は双葉十三郎研究」だからだと思っている。
先生のミステリ好きはあまりに有名なので、ここではもう書かない。

 ずっと批評を読み続けていると、辛いことにも気づく。
’90年代に入ってから、よく画面が暗いとか、耳をつんざく音響とかの批評を読んだ。
ああ、目の調子がよくないのかも・・・とか、補聴器の調子が悪いのだろうか。。。などと胸騒ぎがした。

 大学生の頃、先生を大学の学園祭の講演にお呼びしようと、双葉家のご自宅まで電話をしたことがある。
それこそ、ふるえる指でまわした。
お上品な奥様が出られ、学生にも優しく丁寧に応接して頂いた。
主人は座談会ならよいのですが、講演はしたことがないと申し訳なさそうに話された。
今思うと、あの奥様が上野の音楽学校を出られて、ピアノを弾かれたのだなと思う。
どうして講演会ではなく、座談会に切り替える機転がきかなかったのだろう。。。と悔やまれる。
でも、先生のお声こそ聞けなかったけれど、ボクには大切な、思い出深い一コマになりました。

 旧臘(2009年12月)に、先生は遠い国へと旅立たれました。
ボクの手元には、夭折されたミステリ・映画評論家の瀬戸川猛資さんが編集された『ボクの採点表』と『日本映画批判』(トパーズプレス刊)が残った。
昨日、最初期の『日本映画創作上の諸問題』という論文を読み返した。
衣笠貞之助の『鼠小僧次郎吉』に触れ、モンタージュは殊更に不自然化されたコンティニュイティ上の問題にすぎず、唯物弁証法を通じてのみ理解されると書かれていた。
これこそ、映画理論である。
22才の若書きだから、やや生硬だが、現役の東大生が書いたシャープな切れと才気が横溢していた。
けれど、軽いフットワークと楽しいお遊び心満載の先生であってくれて、よかったなあとつくづく思った。

 ’30年代からずっと変わらずに、次から次へと古今東西の様々な映画を批評し続けた先生の功績は、計り知れないほど大きい。
先生を慕う映画評論家がとても多かったのも合点がゆく。
 そして、いつも本屋で胸を躍らせて、先生の『ボクの採点表』を立ち読みしていた少年たちは、幾世代も越えて夜空に散らばる星の数ほどいるに違いない。
ボクもその星の片隅のほんのひとつになれれば、とても幸運である。
 願わくは100才までという、望蜀の願いがなかったといえば嘘になりますが、いつかはお別れしなければなりません。
 
 長い間、ご苦労様でした。
 どうぞ、ゆっくりお休みになってください。

 先生が原作・構成をされた『日真名氏飛び出す』の、夜の街のエンドロールに流れた曲をかけます。
小学生低学年だったボクは、このエンドロールを観て、な~んて都会は素敵なのだろうって思ったのでした。その気持ちは今も変わらない。




by nonoyamasadao | 2010-01-19 10:35 | ミステリ映画 | Comments(7)
Commented by nonoyamasadao at 2010-01-20 21:35
To まめ蔵さん
>心の内、お察しします…。
双葉十三郎先生が、nonoyamasadaoさんの原点なのですね。
-----------
今晩は。というより、あけましてめでとうございますのご挨拶してませんね。双葉先生はボクにとっては、映画の神様ですね。

>『センセイの鞄』、
最近、寝る時に読んでる本です。
--------
これ、前に書いたかもしれませんが、読み止しのままなんですよ。
読んでいるときに、怪我で入院したので、げんをかついでやめてます。

>更新、ずっと待ってました。
お仕事のペースには慣れましたか?
-------
もともと不人気でしたので、もう誰も読んでくれないだろうなと思ってました。ましてコメントを頂けるとは・・・。いや、うれしい。
な、なんざんしょね。
今年、還暦なのに、40才になったころの忙しさがやってまいりました。
なんだかなあ、ぶつぶつ・・・。(笑)
ですが、それもまたありか。
まっ、いっかあ。完投だけを目指します。
もう少ししたら、お邪魔しますね。
Commented by 閑居 at 2010-01-24 16:14 x
ブログの更新が始まりましたね。
仕事上の立場により、気苦労も多いものですが、健康に留意しながらブログを更新してください。
Commented by nonoyamasadao at 2010-01-24 21:15
To 閑居さん
>ブログの更新が始まりましたね。
-----------
おお~、なんだかずいぶんお久しぶりな感じです。

>仕事上の立場により、気苦労も多いものですが、健康に留意しながらブログを更新してください。
-------
ちまちました雑件ばかりだけど、結構、手間取る。
つい先日、コブシの樹木をみて、季節は流れてるなと思いました。
仕事に慣れたら、小さい記事を時々、書きたいと思います。
今年もよろしく。
Commented at 2010-01-28 20:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by nonoyamasadao at 2010-01-29 09:45
To 2010-01-28 20:19 様
---------
一週間のご無沙汰です。。。って古いですね。
時々、そちらの樹木の写真など拝見して、和んでいます。
季節を感じて、ゆっくりとまったりとのはずだったのですがねえ。
誤算だったなあ。(笑)とかく人生はままならない。
な~んてね。愚痴は♪碌なもんじゃねえ~~ですね。
ひたむきにいつも全力投球の人には、ホンと頭が下がりますね。
ボクは手抜きの完投をめざします。そのうちに遊びに行きます。
Commented by えい at 2013-02-08 23:45 x
こんばんは。
拙ブログにお越しいただきありがとうございました。
ぼくは、仕事柄、
双葉先生とは、よく試写室で同じ空気を吸わせていただいてました。
そのお姿を拝見しているだけでも
伝説を目にしているようで嬉しかったです。

脚本家の桂千穂さんは双葉先生と
よく座談会でご一緒だったようですが、
いまも、そのときのことなどをよくお話を聞かせていただいています。

そういえば、『ブーベの恋人』は
高校の時、リバイバルで観に行きました。
同時上映が『まごころを君に』(『あるジャーノンに花束を』)。
女の子と観に行った最初の映画でした。

また、お時間があったら
覗きにきてください。
新作中心で
懐かしい映画はあまり書いていませんが…。
Commented by nonoyamasadao at 2013-02-09 09:26
To えいさん
>脚本家の桂千穂さんは双葉先生と
よく座談会でご一緒だったようですが、
-------
読んでくださり、しかもコメントまで書いて頂き、恐縮しています。むかし、『シナリオ』の桂千穂さんの映画月評を読んでいました。双葉先生を想起させる書き方でした。

>女の子と観に行った最初の映画でした。
-----
ボクはなんだっけ?忘れた。
映画は映画館で見なければ映画ではないが持論ですが、今は、比較的新しいのは、dvdで観ています。イカンですねえ。
昨晩はトニー・スコット監督の『アンストッパブル』をみたのですが、双葉先生は、スコット(リドリーでなく)の作品を観て、デ・パルマの後継者みたいなことを書いておられたのを思いだしました。
スティーブン・ソダーバーグもトニースコットも、映像派ですが、やっぱ、昔の映像派とくらべると、すこし落ちますね。
ロベール・アンリコは別格ですが、フランス映画では、ド・ブロカやジョルジュ・ロートネルも好きでした。
また、お伺いしますね。
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